[Sicilian gambit; a new strategy for antiarrhythmic therapy].

上室性,心室性期外収縮,心房細動,心房粗動など 日常臨床で遭遇する頻脈性不整脈に対して,治療を目 的としてさまざまな抗不整脈薬が用いられる.しかし これまでは,実際の薬剤選択に適用可能なプラクティ カルなガイドラインはほとんど示されておらず,各担 当医の知識と経験に負うところが大きかった.特に近年 新しい強力な抗不整脈薬が次々と開発され,数多くの 薬剤を臨床で用いることができるようになってからは, それまで治療に抵抗していた不整脈がコントロール 可能になった反面,個々の症例に対してこれらの薬 剤をどのように選択し,使い分けて行くかが実際上大 きな問題になってきた.さらに最近では薬物療法のみ ならず,カテーテルアブレーションや植え込み型除細 動器などの非薬物療法の進歩も著しく,治療現場にお ける選択肢がますます広がっている点も考慮しなけれ ばならない. 一方,近年欧米で行われた抗不整脈薬の客観的大規 模長期投与試験のインパクトも大きい.多くの試験では, 抗不整脈薬による不整脈の抑制が必ずしも生命予 後の改善に結びつかないという成績が示されている. 中にはCAST試験 や SWORD試験 のようにかえっ て予後を悪化させる場合があることも指摘されて いる. 本稿では,このような現状を踏まえ,抗不整脈薬の 新しい分類法あるいは不整脈薬物治療における新しい 薬剤選択の考え方として注目されている Sicilian Gambit 4~6 とは如何なるものか,それを如何に臨床応 用し実際の薬剤選択に結び付けるかについて解説 する.